幻になりかけたショルダーバッグ
2015〜2016年頃に、サンプルとして一度だけ制作した「カブセショルダーバッグ」
当時作ったそのサンプルは、日頃からお世話になっている革問屋さんの社長さんが気に入ってくださり、ありがたいことにそのまま旅立っていきました。
その後はサンプルが手元にないまま時間が過ぎ、しばらくご依頼もありませんでした。
そんな中、制作から約6年後、経年変化の様子をブログで紹介したところ、それを見たお客様から「同じものを作って欲しい」というご依頼をいただきました。
そこから再び息を吹き返したこのショルダーバッグ。
2024年の春に久しぶりに制作する機会があり、またそのブログをみたFさんが、ありがたいことに気に入っていただきまして、素材をユーフラテに変えて制作させていただきました。
iPadがちょうど収まる実用的なサイズ感で、必要なものだけを軽やかに持ち歩きたい方にぴったりの鞄です。
(※2024年10月〜12月制作)
本体素材はユーフラテ
ユーフラテとは、ミネルバボックス、プエブロと同じタンナー・バタラッシ・カルロ社にて作られているイタリア植物タンニンなめし革です。
ドラムの中に水を入れて、繊維をほぐすことで表れる細かいシボが特徴。
乾燥後、銀面をガラス玉で擦り、上品な艶を出しています。
厚みは1.2~1.4㎜と比較的薄く、イタリア植物タンニン鞣しの多脂の中でも軽めな革になります。
リネンとのコンビのトートバッグcombinazioneにも使っている革素材です。

一枚一枚型紙に合わせ、裁断していきます。

極太0番糸縫製
ショルダーバッグの根革のジョイントです。
マレンマ元厚を土台にしながら2枚重ねを一緒に縫製しています、長期使用に耐えられるようにです。
そんなに大きくないバッグですが妥協しません。

全てのパーツ縫製が整ってきました。

隠し味
カブセショルダーという形は、長く使っていくと背胴の上が“くたっ”と倒れてくることがあります。
下請け時代、その状態になった量産品をたくさん見てきました。
自分が作るなら、幅1cm・厚み0.9mmの焼き入り帯鉄を背胴の上部に忍ばせています。
革は育っていって、柔らかくなってくる、でも型崩れしない、そんな使い心地を目指しています。

まとめ縫製
口元の縫製は0番と迷いましたが、あまり主張しない8番で。

完成
♢素材
本体:ユーフラテ(イタリアの名門タンナー、バダラッシー・カルロ社による植物タンニンなめし牛革)
被せ・根革:マレンマ(イタリア老舗タンナー、ワルピエ社による植物タンニン鞣し革)
内装/コットン
♢サイズ(W×H×D)
28cm×22cm×9㎝
♢カラー
オルテンシア&チョコ
♢ファスナー
YKKエクセラ
♢金具
真鍮

オルテンシアとチョコの色、素材のコントラスト最高です。

背胴には小マグネのポケット

前胴にもポケット。

内装はファスナーポケットと平ポケット×2

長期使用でベロが緩くなってきてしまったら、交換がスムーズにできるようなデザイン。
Fさん、今回もありがとうございます。(先日もワークショップのご参加ありがとうございました)
ユーフラテのオルテンシアが工房にあった、この“ちょうどいいタイミング”でご依頼いただけたこと、とても嬉しく思っています。
このバッグのこれからの変化も、楽しみにしています。




