クリ手とは
クリ手とは、手だけが入る箇所だけくり抜いてあるので、クリ手と名付けてます。
くり抜いて持つ箇所は本体の革の上に、ブッテーロやマレンマを2枚積み上げています。
この手のデザインはこの箇所がすぐに下手っているのをよく見かけていました。
自分が作るなら、2枚積み上げ永年使用しても下手らないように頑丈に仕立てようと考えます。
サイズは13インチのmacbookや、iPad Proがピッタリ。
PCを入れないときは二つ折りにして、クラッチバッグにもなります。
コバ磨き
持つ箇所は表革にミラージュの革を2枚積み上げ、中革と貼り合わせて一気に裁断します。
裏側のエッジはバリが出るので、まずは面取り。
そして、コバ磨き。
前、背と色が違う。
ツートンカラー
表の身頃の革も前、背の色を変えるリクエスト。
元々味のある革がお好きなお客様だったので、18世紀のレシピを再現したイタリアバケッタ製法”ハバナ”の革をお勧めしお見せしたら、ポルポラ(レッドにクロのってる)を気に入っていただきました。
さらに、アケロもちょうど1本取れる面積が残っていた。
ならば、表背とツートンにしようと盛り上がりました。
ハバナ
イタリア植物タンニン鞣し革の中でも18世紀ごろの伝統的な古典的なレシピを再現して作られています。均一性の価値観より、まず丈夫であり、使い込めば使い込むほど馴染んでいく個性的な経年変化に価値を置いて作られています。
ベース本体の染料にうっすらとクロがのっていながらも牛(COW雌)の生きていた証のトラやキズが美しく表現されています。一枚一枚表情が違いとても個性的です。
タンナー:イタリアの名門タンナー、バダラッシー・カルロ社
色:ポルポラ&アケロ
ショルダーベルト付きにカスタム
二つ折りクラッチの時には、ショルダーベルトにして使用したい、さらには、金具のDカンは付けたくないとのリクエスト。
革だけでナスカンを取り付けたいと、かなりのこだわり、さらにはスッキリ見せたい。こういうのにお応えするの嫌いじゃありません。
市販で売られているような作りでは数回使用で革がへたる。色々見てきました。
そこで、色々試行錯誤してできたのは、ミラージュ(3.8㎜)を使用し、ナスカンのかかる部分のみ3.8㎜を残し、0番極太ステッチで縫製。
縫製箇所の距離を少し横に伸ばし、身頃のまとめと一緒に縫製することで一体化し、頑丈になると考えました。
ショルダーベルトはミラージュを使用、クリ手の部分と同じ素材。
12㎜幅でもベルト用のミラージュは厚みが4㎜近くあるので安心。
ミラージュ
ミラージュとは
厚み約4ミリ厚。植物タンニンで鞣され、オイルと染料をたっぷりと含ませたプルアップレザー。
表面の艶はカゼイン仕上げ。タンパク質を主原料にオイルやワックスを加えたものを塗り、磨き仕上げされています。
よって、オイルなどのメンテナンスは必要ありません、ブラッシングや乾いた布で拭き取りで大丈夫です。
裏仕上げもとても綺麗でベルトに多く使われています。
タンナー:G.B Leathers イタリア語表記Miraggio 日本語で蜃気楼という意味。
こうして、カスタムしてさらに自分仕様にしてお客様も作り手も気分が上がります。
個性的な鞄を作らせていただき作り手冥利に尽きます。
Mさんありがとうございました。